2022年になり、例年のごとく様々な法制度などの変化があります。住宅ローン控除や児童手当廃止など、僕らの暮らしやお金に影響する8つの変更点をまとめました。
住宅ローン控除
そもそも住宅ローン控除が改正されるようになった背景は、住宅ローンの金利負担を軽減するために始まった制度です。
ですが、直近10年の住宅ローン金利が控除率1%を下回り、住宅ローンを利用することでプラスになる逆ザヤ状態に陥っていたため変更することになったようです。
変更点まとめ
具体的にどう変わるのか。表形式でまとめてみました。
年度 | 2021年度 | 2022年度 |
控除率 | 1.0% | 0.7% |
控除期間 | 10年(13年※) | ①新築・買取再販:13年 ②中古:10年 |
年末残高 限度額 | 一般住宅:4,000万円 長期優良住宅等:5,000万円 | ① ・長期優良・低炭素住宅:5,000万円 ・ZEH水準省エネ住宅:4,500万円 ・省エネ基準適合住宅:4,000万円 ・その他の住宅:3,000万円 ② ・長期優良/低炭素/ZEH/省エネ住宅:3,000万円 ・その他の住宅:2,000万円 |
所得上限 | 3,000万円 | 2,000万円 |
入居期限 | 2021年中 | 2025年まで |
- 消費税10%適用の新築・中古住宅の取得を以下の期間に締結し、かつ2022年12月31日までに入居した人は住宅ローン控除が13年に延長されます
注文住宅:2020年10月1日~2021年9月30日、その他の住宅:2020年12月1日~2021年11月30日 - 2021年度の住宅ローン11~13年目の延長時の控除額は、次のうちのいずれか少ないほうとなります
住宅ローンの年末残高(上限4,000万円)×1%、{住宅取得等対価の額-消費税額(上限4,000万円)}×2%÷3
ちなみに余談ですが、
僕は書類的には2019年9月末に契約したようなので、住宅ローン控除が13年延長に適応されない残念な人です。しかも購入時の消費税は10%取られてオコです。あれ、でも消費税10%取られているってことは適応されるのかな、結論よく分からないです(笑)。
話を戻しまして、影響ある変更点は控除率・控除期間が1.0%・10年から0.7%・13年になることです。
超簡単に計算するとローン残高4,000万円以上がそれぞれ10年、13年続いたとして、変更前は400万円の控除、変更後は364万円の控除で36万円の差分が生じます。
個人的にはあまり大きなインパクトはない印象です。つまり、このまま低金利が続く限りは、不動産需要の変化はないのではないかという認識です。
但し、2022年度税制改正大綱では、2025年末までのそれぞれの住宅の借入限度額および控除率も発表されおり、2024年以降はさらなる縮小となることが明らかになりました。控除率0.7%は2025年まで据え置かれるものの、一定の省エネ基準を満たす住宅の借入限度額は引き下がり、一般住宅は住宅ローン控除の適用外になります。
つまり、省エネ性能が認められない住宅の控除額は、2024年以降ゼロとなりますので、それは多少のインパクトはあると思います。
2024年までに低金利が続くのであれば、買える時に買った方が個人的にはいいと思います。
住宅ローン控除の注意
但し、住宅ローン控除の恩恵を最大限に理解するためには、住宅ローン控除の仕組みを正しく理解することが大切です。住宅ローン控除額が30万円で、本来納めるべき所得税が8万円、住民税が18万円だった場合の具体例で説明します。
8万円+18万円の計26万円の実際に収めた納税額が戻ると思っている人は注意です。
所得税に対する上限はありませんが、住民税に対する上限は13万6500円と定められているため、実際に戻ってくる控除額は、
所得税(8万円)+住民税(上限:13万6500円)=21万6500円になります。
つまり何が言いたいかというと、最大限住宅ローン控除の恩恵を受けるには所得税をどれだけ納めているのかが肝になるということです。

この控除の仕組みも理解した上で、
住宅ローン控除が変更があり、2025年から更に変更があるので、急いで買った方がいいですよ!という不動産の営業文句をただただ鵜呑みするのではなく、自分の所得状況に応じて対応できるようにするといいと思います。
住宅ローン控除について、ざっくりお得になる人、そうでない人をまとめるとこんな感じでしょうか。
2021年までお得
- 中古住宅
- 省エネ対象外の住宅
- 高所得層
- ペアローン
- 扶養家族が少ない
- 他に節税していない
変わらない
- 年収700万くらいの所得層でローン額が3,000万くらい
2022年からお得
- 新築住宅や省エネ対象住宅を検討している年収700万くらいの所得層、単独ローン
- 扶養家族が多い
- 他に節税している
あくまでざっくりした内容で、実際には、自分たちの状況を整理したうえでシミュレーションしてみて下さい。
年収1,200万円以上の児童手当廃止
児童手当は中学3年生までの子どもを養育している方に現金が支給される制度です。
支給額は、子どもの年齢と数、所得制限に応じて変わります。
年齢 | 1人あたり支給額(月額) |
---|---|
0歳~2歳 | 15,000円 |
3歳~小学校(第1子、第2子) | 10,000円 |
3歳~小学校(第3子以降) | 15,000円 |
中学卒業まで | 10,000円 |
- 受給する方が所得制限以上の場合は、1人につき月額5,000円
扶養親族数 | 所得制限 限度額 | 給与収入額 の目安 | 該当例 |
---|---|---|---|
0人 | 622万円 | 833.3万円 | ・子どもが1人のひとり親世帯※ ・子どもが1人で、配偶者の年収が103万円以上※ ※前年の12月31日時点で、まだ生まれていない場合 |
1人 | 660万円 | 875.6万円 | ・子どもが1人のひとり親世帯 ・子どもが1人で、配偶者の年収が103万円超 |
2人 | 698万円 | 917.8万円 | ・子どもが2人のひとり親世帯 ・子どもが2人で、配偶者の年収が103万円超 ・子どもが1人で、配偶者の年収が103万円以下 |
3人 | 736万円 | 960万円 | ・子どもが3人のひとり親世帯 ・子どもが3人で、配偶者の年収が103万円超 ・子どもが2人で、配偶者の年収が103万円以下 |
4人 | 774万円 | 1,002万円 | ・子どもが4人のひとり親世帯 ・子どもが4人で、配偶者の年収が103万円超 ・子どもが3人で、配偶者の年収が103万円以下 |
5人 | 812万円 | 1,040万円 | ・子どもが5人のひとり親世帯 ・子どもが5人で、配偶者の年収が103万円超 ・子どもが4人で、配偶者の年収が103万円以下 |
ところが、2022年から所得制限で見直しされることになりました。
変更点まとめ
2022年10月支給分から所得額が1,200万円以上(扶養親族等の条件あり)を特例給付の対象外になります。
具体的には、月額5,000円→年額6万円→中学校卒業までの総額95.5万円がなくなります。世界一周できるくらいの金額なので、インパクトそれなりにあります。

個人的に、日本は経済成長に向けて人口減少対策の一つでもある少子化対策に力を入れなければならない中、児童手当を見直すのはどうなのかなと思います。
ですが、年収1,200万円以上の方でも抜け道が理論上はあります。その技をご紹介したいと思います。
- 実際にまだ試したことがないので、できるかどうかはまだ100%ではありません、ご留意ください
児童手当の基準となる所得額の計算方法
まずは所得額の計算方法についての正しい理解が必要です。
所得額の計算方法は、所得額-控除額-8万円=児童手当の基準となる所得額です。
所得額とは給与所得やいわゆる副業にあたる不動産所得等の1年間(1月1日~12月31日まで)の所得の合計金額となり、必要経費を差し引いた後の金額が該当します。
控除額とは雑損控除や医療費控除、小規模企業共済等掛金控除などで、それを差し引き、法律に定められた控除額の8万円を差し引きます。

年収1,200万円以上の抜け道
計算式が出たので抜け道はわかりますよね。大きく二つの抜け道があります。
一つ目の抜け道は所得額にあたる経費を増やすことです。そのため、サラリーマンの方は副業をする必要があります。
僕は副業として不動産投資をしている理由にもなるのですが、副業をすることで確定申告時に経費計上することができるようになります。具体的な経費カテゴリー例は下記で、細かいことは割愛しますが、生活に関係する支出のほとんどを按分して経費計上できるようになるのです。
- 経費計上カテゴリー例:旅費交通費/通信費/光熱費/交際費/自宅兼事務所費/車(持っていないですが、持っている方はできます)/ガソリン代
僕の場合、昨年の実績で言うとそれぞれの経費カテゴリーの合計で200万近く支出で使っており、これを100%経費にすると税務署から怒られるので、それぞれの経費カテゴリー別に〇%按分をして経費にしております。
加えて、減価償却という考え方があり、投資用マンションの躯体部分と設備部分にかかった費用を耐用年数に応じてならした分も経費となります。
これも物件の購入時の築年数や建物費用によって変わってきますが、僕の場合は躯体と設備部分の減価償却がある限りは毎年150万近くのインパクトを経費計上できます。
つまり、所得ー200万近く×〇%ー150万近くがここでいう所得額になるという話です。
少し話は逸れますが、不動産投資をやることで所得額が減り確定申告をすると還付※され、節税効果の期待もあります。
- 源泉徴収などによっていったん納付した税金が納めすぎた際、納税者に対して相当額が返還されること
課税所得金額が900万円を超えると所得税が23%から33%に上がってしまうので、特にそれくらいの層の所得層にはおすすめの節税術になります。
住宅ローン控除と組み合わせると毎年けっこうインパクトがある節税対策になります。
また、それらを原資に、減価償却がなくなりそうな時にまた新たに投資用のマンションを購入していくと効率よく投資が可能になります。
この辺の節税対策はまた別記事でもまとめていく予定ですが、インフレにも強く、ミドルリスク(国債よりリスク高く株式よりリスク低い)の不動産投資は所得が一定以上の方には個人的におすすめです。
話を戻し、二つ目の抜け道は控除を増やすです。
医療費控除、小規模企業共済等掛金控除などを利用すれば、児童手当の所得制限の判定基準となる所得額が理論上は下がります。
ということで、所得が増えてこういった制度の恩恵がなくなったり、税金が増えることを恐れている声も耳にしますが、合法的な抜け道はあるので、とりあえずやれるだけ所得を増やせばいいんだと個人的には思っています。
成人の年齢
民法で定める成年年齢(成人)は明治時代以来20歳でしたが、140年ぶりに2022年4月1日から18歳へ引き下げられます。4月1日時点で18歳・19歳の人は4月1日から成人となり、4月2日以降は18歳の誕生日を迎えると成人となります。
変更点まとめ
携帯電話の契約、賃貸、クレジットカード、ローンといった契約が18歳から本人名義で契約可能になります。
また、成人になれば親権の適用外になるので、18歳から住む場所や就職先も自分で決定できるようになります。
加えて、2023年からは、1月1日時点で18歳であればNISA口座を開設できるようになり、一般NISAやつみたてNISAでの投資を始めることが可能になります。
個人的に早いタイミングで資産づくりに向けた投資をするのはおすすめしていません(笑)。
代わりに、年収上げるための自己投資を推奨しています。そもそも18歳から投資するだけのお金は多くはないと思うので、どうなのかなといった印象です。
親の贈与税対策で子どものNISA枠で年110万円を贈与して投資させる作戦が2年早くできるのは、少しだけメリットがあるかもしれませんが、こちらも法制度が変わる噂もあるので、やはり、どうなのかなといった印象です。
ちなみに、飲酒や喫煙、公営競技(競馬、競輪など)の券の購入、養子を迎えることは20歳からのままで、大型・中型自動車免許の取得なども、それぞれ21歳から・20歳からと変わりません。
高校で投資の授業開始
10年程度ごとに見直される学習指導要領改訂で、2022年4月から高校で投資教育が実施されます。
金融商品や資産形成について基本的な金融商品の特徴(メリット、デメリット)、資産形成の視点にも触れるようにする
高等学校の新学習指導要領
家庭科の教員が家庭科の授業で高等学校の金融教育・投資教育を行うことになります。
僕の高校時代の家庭科の先生が投資について教えられたのかな?といった印象ですが、そこさえクリアできれば学生時代から投資という考え方に触れられ、非常によい傾向だと個人的には思います。特に複利や金利の考え方は歴史的にも個人的に重要だと思います。
話は逸れますがさわりだけ述べると、
金利は経済活動を行う上で欠かせない存在であり、金利があるから投資が促進され、それによって社会が発展してきました。ところが、自由な営利活動、とりわけ金利を目的とした貸し付けは、金を借りても返せない自由民を生み、金利は人々の困窮に拍車をかけ、階層秩序を崩壊させかねない危険性を持っており、 歴史を振り返ると、宗教が金利を禁止していた時代もありました。
現在、リボ払いが金利を目的とした貸し付けに近い気がします。なので、リボ払いをする若い子たちがいなくなることを心から願います。
年金の受給開始時期
原則として65歳から受け取り開始となる公的年金ですが、実際は60歳から70歳までの間に受給を開始できます。
それが、2022年4月以降は、年金制度改正法の施行により「60歳から75歳まで」に拡大することになりました。
年金額が受給開始時期によって変化する仕組みです。65歳から受給開始時期を1ヵ月繰り下げるごとに0.7%ずつ増えます。
受給開始時期65歳だと月額増減率を変わりませんが、70歳だと+42%(0.7×60か月)、75歳だと+84%(0.7×120か月)
長生きをする自信がある人こそ、繰り下げ受給をするメリットがあるようになります。
僕は元気な内にお金もらいたい派なので、65歳からほしいかな。
iDeCoの受給開始年齢と加入年齢上限
個人型確定拠出年金のiDeCoは、対象年齢であれば、日本在住の会社員・公務員、自営業、専業主婦・主夫など、原則、全ての人が加入できます。
2020年に成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」によりiDeCoの制度が変わります。
変更点まとめ
まず、 現在60歳から70歳未満の受給開始年齢が2022年4月1日から60歳から75歳未満に拡大します。

企業型DCも厚生年金被保険者で65歳未満から70歳未満へと拡大します。

長く働き続けたい人にとっては、受給開始を遅らせる選択肢が広がります。
また、加入年齢も拡大し、現在は60歳未満ですが、2022年5月1日からはiDeCoの老齢給付金受給者や公的年金を65歳前に繰上げ受給した人を除き原則65歳未満に変更になります。但し、この間も、国民年金に加入していることが主な要件となりました。

iDeCoに何歳から加入するか、いつ受給開始するかについて自由度が高まり、より自分に合った選択が可能になります。
選択肢が増えることは非常にポジティブだと個人的には考えております。
企業型DCとiDeCoの併用
iDeCo関連でもう一つ。会社員がiDeCoを検討する際、企業型DCのない会社では任意でiDeCoに加入できる一方、企業型DCのある会社では、会社が規約で併用を認めていないとiDeCoに加入できないことになっています。
2022年10月1日から、企業型DCのある会社でも加入者本人の意思だけでiDeCoに加入可能になります。
但し、企業型DCで加入者が掛金を上乗せするマッチング拠出を利用時は、iDeCoが利用できないため注意しましょう。
iDeCoも節税対策になるため、所得が増えれば増えるだけ恩恵があります。
iDeCoに入ることで毎日の生活に余裕がなくなる、年収アップに繋がるような自己投資もできなくなるのであれば、そもそも自分はやらなくてもいいと思ってしまう派です。但し、お金があれば浪費してしまう方は、やってもいいと思います。自分も20代はそうでした。
不妊治療の保険適応
不妊治療は、治療と疾病の関係が明らかで、治療の有効性・安全性等が確立しているものについては保険適用の対象としている一方で、原因が不明な不妊症に対して行われる体外受精や顕微授精等については、保険適用の対象としていない状況です。
2022年4月から条件に該当する方は適応される治療法が増えました
変更点まとめ
まず、該当される治療法ですが、人工授精、体外受精、顕微鏡受精になります。
対象者は不妊症と診断された男女で、治療開始時の女性の年齢によって適応回数が変わります。
具体的には、子ども1人につき40歳未満は最大6回まで可能で、40-43歳は最大3回までとされております。
助成金額は1回30万円のようです。



少子化、晩婚化の日本としてはようやくといった感じですが、少しでも子どもが増えていくトリガーになればいいなと思います。
まとめ
毎年いろいろと制度が変わっていき、僕らの暮らしも適応していく必要があります。時に、改悪とみられる仕組みでも、なんとか現状維持に近づけるような抜け道もあることもあります。 なので、こういった情報収集は日々するようにしております。
いろいろと仕組みから正しく理解し、必要に応じてお金のプロであったり、合法的に実際に対策している方などの複数名から情報収集し、最終的に自分自身で何をやって何を捨てるのか意思決定できるようになると、QOLも上がっていくのではないでしょうか。